専門知識とその責任者

オプジーボを求めるがん患者がとても増えている。

ノーベル賞の効果はすごい。

私の親類も「あのノーベル賞を取った薬で自分の大腸がんが治るのか」と

医者に尋ねたと話していた。

もちろん医者には「適用外」と丁寧に説明されたとのことだった。

 

今度は風邪薬の話をする。

風邪の原因は実はほとんどの場合ウイルスだ。

にもかかわらず、抗菌剤を求める患者がとても多いらしい。

ひどい場合だと、

抗菌剤を出してくれる医者に会うまでドクターショッピングをする患者すらいるとのことだ。

 

現在、世界レベルで耐性菌が問題になっている。

これまでの抗菌剤が効かない菌が出てきているのだ。

これは、菌の遺伝情報が更新されたことと、

自然淘汰が原因と言われている。

つまり、これまでの抗菌剤乱用によって、

既存抗菌剤で殺せなかった菌が生き残って増えているのだ。

 

製作者とユーザーの間に

専門家がコントロール役として存在している医療システムでさえ、

こんな問題が起こり続けている。

当然抗菌剤乱用の責任者として、

不必要に薬剤を処方した医者は批判されている。

さて、この場合、製作者やユーザーは清廉潔白と言えるのだろうか。

 

オプジーボであれば、重篤な副作用が存在するため、

比較的厳重に利用されている (と信じたい)。

そもそも、免疫チェックポイントシステムなんていう

わけのわからないものに関係して、

がんを自分で攻撃さえている薬なので、

免疫システムが暴走するのではという恐怖が付きまとう。

医師の説明があれば、患者も無理に手を出そうとはしないだろう。

一方で、風邪の際に抗菌剤を求める患者は、

風邪やウイルスや菌がなんなのかも理解していない状態で、

全く無意味な広域抗菌剤 (複数の菌に有効な薬) を欲しがったりする。

 

一般ユーザーが全員菌やウイルスの知識を持ち合わせることはないだろう。

ユーザーの自己責任と言い切ってしまえば楽だが、

今後も専門家によるサポートが必要だろう。

 

どの業界でも、専門家と一般ユーザー間の対話が必要だ。

「副作用や風邪の原因など、調べれば誰でもわかるので、医者や薬剤師は不必要」

とはならない。

責任をもつべき専門家を確保し、

彼らがその責任に応じた給与をもらうシステムを維持するために、

我々はどうすればよいのだろう。